森博嗣・カタカナ表記について

rashu2006-01-12

 森博嗣の作品の中で使われているカタカナ表記がよく巷で話題になる。「読みにくい」とか「自己中心的だ」とか。しかし、これはオリジナルではない。工学分野ではごく普通の表記であって、JIS(日本工業規格)や学会・協会でも標準にされているものだ。
 特に、長音のこと。英語で最後が「er」や「or」になる単語で、カタカナにしたとき3文字以上になるものには長音をつけない、というルールがある。「センサ」とか「モニタ」とかだ。2文字以下の場合は英語でも後ろの母音にアクセントが来ることが多く、長音をつけることにしたのだろう。新聞などは、たぶん国語審議会のなにかを標準にしているから伸ばすのではないか。ようするに文系だ。
 しかし、「コンピュータ」「トランジスタ」などは伸ばすことは滅多にないし、「プリンタ」も伸ばさないことが多い。これを伸ばす人がいたら、かなり古い感覚だと思える。さらに、「スリッパ」などは誰も「スリッパー」と書かない(もちろん言わないし)。というわけで、普通は、伸ばしたり伸ばさなかったり不統一である。それを統一しているだけ。伸ばさない方が実際の発音にも近い。「スーパ」とか「マイナ」とかを、「スーパァー」「マイナァー」と伸ばして言う人はお年寄りには多いが。
 加えて僕の場合、子音+yで終わる単語は「ィ」を用いることにしている(有名な固有名詞など、例外はあるが)。「ミステリィ」と書くのはこのルールに準拠している。一般的には、長音をつける派とつけない派が2分しているようだ。論文では長音は付けない。「エネルギー」ではなく、「エネルギ」である。しかし、分野によって異なる。
 どうして「タクシー」や「デビュー」などは伸ばすのか、という質問が絶えないが、英語のスペルを思い浮かべてもらいたい。上記のルールに当てはまらないものは長音をつけている。
 どちらにしても、こだわりでもなんでもない。表記など大したことではない、と考えていて、こんなことで頭を使いたくないので、単純なルールを決めているだけのことだ。

カタカナ英語の標記が工学系
通常、工学系のカタカナ英語(2音以下)は語尾を伸ばさない。“コンピューター”は“コンピュータ”。“ハンバーガー”は“ハンバーガ”である。従って、“コピー”は“コピ”と標記せず“コピー”のままである。