中心市街地活性化とLRT導入

: 新型路面電車の導入で現実化する中心市街地活性化の展望
 モータリゼーションの進展の中で中心市街地の空洞化が,日本だけではなくアメリカ合衆国やヨーロッパの各都市においても見られる.そうした「空洞化」対策として,中心市街地の活性化がはかられてきたが,日本では大きな成功を見ていない.そのため中心市街地活性化法が制定された.その施行(1998年7月)以来,「中心市街地のまちづくり」に取り組む地方自治体が次第に増えている.
同法ではまちづくりの基本計画を市町村自らが作成することになっている.200以上の市町村がこの「基本計画」を策定し,さらに進んで中心となるまちづくり推進機関であるTMO(タウン・マネジメント機関)を発足させた所は100か所以上見られる(2000年3月末時点).
しかし各地の基本計画に盛り込まれている交通面の対策は,トランジット・モール,循環バス,駐車場整備,歩道整備,自転車駐輪場等整備といったものしか見られない.目を海外に転じると欧米では路面電車が今なお活躍している都市が多く,いったん路面電車が廃止された所にも1980年代に入って,新しく路面電車が続々と復活してきている.こうした潮流は「トラム革命」といわれるが,これは中心市街地の活性化をも大きくターゲットにした動向であることが分かってきた.
ドイツ・フランスを中心としたトラム革命(交通ルネッサンスとも呼称される)の余波が,英国をはじめとするEU(ヨーロッパ連合)各国の諸都市に波及し,現在新型路面電車(LRT=Light Rail Transit Systems)の新設がまさに怒濤のごとく進められている.LRTは路面から段差なく乗り降りできる超低床車,音も静かでデザインもスマート,スピードも速い.電気をエネルギーにしており,排気ガスは出ない.
EUの共通政策として,LRTはマイカー抑制の受け皿・環境問題の解決・地域開発・都心の空洞化対策などを具体化するものとして位置づけられ,「上下分離方式」の採用で積極的に建設が進められている.中心市街地の活性化のためには,中心市街地へアクセスをしやすくし,中心市街地における回遊性を高め,中心市街地におけるアメニティを高めることがポイントである.
都心に歩行者を戻すこと,いわばモータリゼーションを克服することが必要なのである.また高齢者や障害者のモビリティ(移動の可能性)を確保することは,あらゆる人々がいきいきと社会的あるいは個人的に活動を展開できるための前提条件といえる.交通は市民が生活や仕事をする上で極めて重要で.若者もお年寄りも,身体障害者も健常者もともに暮らせるまちづくりの上からも極めて肝要である.
そうした交通は,環境への悪影響や危険をおよぼさないものであるべきといえる.こうしたことを総合的に勘案すると,都市ではマイカーではなく,低公害で人にやさしいLRT(新型路面電車)の整備・充実ということになろう.
ひとと環境にやさしい点と建設コスト・期間等を考えれば,21世紀はLRTが都市交通の主役になろう.自治体と沿線地域を巻き込んだまちづくり運動のなかで,LRTの導入を具体的に進めることが課題といえる.中心市街地を活性化し,人々がいつまでも住み続けられるために,実現を急ぐべきといえる.