原油高騰

住宅・石油・2008中国バブル。住宅バブルが砕け、次は。

住宅バブルがはじけてマネーが石油に流れたために価格が上がっている部分は確かにある。
が、信用収縮は住宅バブルの崩壊で収まるものではなく、ファンドが経営を維持するためには、どこかで損益を確定させなければならない。住宅関連で膨大な不良債権を抱えれば、それを引き当てする資金を準備しなければならないはずであり、どこかで原油への投機を続行できなくなるはずだ。

ファンドが原油投機で売り抜けを図ったときが石油バブル崩壊の始まりとなる。そのとき、きっと現在のサブプライムローン債権のような原油債権取引のメカニズムが一般のニュースになるのだろう。住宅と同じで価格が上がるから買う。上がり続けるから買う。
が、もう上がらないと思ったら、下がる前に誰かが売り始める。今は、誰もが石油はバブルだと知りながらも、価格が上がる理由を投機以外のもので説明する。
中国などの新興国の需要が旺盛で需給が逼迫しているからだとか、産油国が高値安定を求めて増産しないからだとか、そういう理由づけをする。だが、それは背景であって本質的な理由ではない。

世に倦む日日


本書は原油価格決定の仕組み、価格上昇の要因を明らかにし、資源戦略を確立できない日本政府を批判している。

 世界の原油価格に最も強い影響力を持つのがNYMEXニューヨーク商品取引所)に上場されるWTI(ウェスト・テキサス・インターミディエイト)原油先物だが、その取引量は現物決済されるWTI原油の600倍にもなるらしい。原油を売買しているというよりは相場を売買していると言った方が良いようなもので、まさにマネーゲームで価格が決まっているのである。
 OPEC石油輸出国機構)の価格支配力が低下し、市場に価格決定権が移ったのは1980年代。以来、原油価格は10ドル代で推移し、市場が適正価格を形成したように見えた。


しかし中国などの経済発展による需要増、中東の不安定化などによって原油の先高感が強まると、安定的な価格上昇を求める年金基金、価格の変動に対して短期的に資金移動をかけて利益を生み出すヘッジファンドなどが資金を投入した結果、異常な原油高が起きたのである。
これは市場の失敗であり、市場(原理)主義の誤りを示すものと言える。

 市場が生んだ原油の高騰によって潤っているロシアなどの産油国が国家統制による資源管理を強めているという皮肉な現実もある