世界の伝統的なすまいと集落・都市

9月27日(木)〜2008年1月18日(木)木5時 18時20分〜19時50分
第2回  インドネシアⅠ−鞍型屋根の住まい
第3回  インドネシアⅡ−住まいのコスモロジー
第4回  パプア・ニューギニア−ハウスタンバラン・メンズハウス
第5回  中国−四合院・ヤオトン・客家の環状土楼
第6回  メキシコ−インディオの住居・コロニアル都市
第7回  南米(アルゼンチン・ボリビア・ペルー・チリ)−チパヤ・湖上住居
第8回  トルコ・シリア−中庭型住居
第9回  イエメン−塔状住居
第10回 アフリカⅠ(モロッコ)−カスバ・クサール
第11回 アフリカⅡ(カメルーン・マリ)−コンパウンド・ドゴン族の住居
第12回 ヨーロッパ−歴史的都市と住居
第13回 日本−伝統的町並み
第14回 エコロジカルデザインと伝統的住居
人間は自然や社会,文化などが異なる多様な環境のもとで住生活を営んできたが,世界各地の集落を踏査してみると,環境条件に対する対応の仕方もまた非常に多様であり,人々は実に様々な住まい方をしてきたことがわかる。たとえ自然・社会条件が類似していても、必ずしも同じような住居や集落を形づくっているわけではなく,隣り合った集落でも異なった形態の住居に住んでいることも数多く見受けられる。このような地域固有の住居は長きに渡って受け継がれ,伝統的住居や集落・都市として見事に結実してきたが,急激な近代化と都市化,グローバル化に伴い,住居の地域的な差異は次第に希薄になり、世界各地の集落・都市風景は多様性から均質性へと移行してきている。この講義の背景には,急速に亡びつつある伝統的(ヴァナキュラー,土着的ともいわれる)住居や集落・都市を,“文化としての住居”として再度捉え直してみようとするねらいがある。
 世界の伝統的な住居や集落には、私たちの想像が及ばないほどの構想力と表現力が満ち溢れており,気候や地形などの環境条件を巧みに活用した独創的な住まい方の技法が数多く見いだされる。それらは現代の住居計画にも充分に通用する英知に富んでいる。伝統的な住まいのかたちは環境配慮型デザインの宝庫といえるもので,昨今,地球環境問題に対する関心が高まりつつある中で,再び注目を浴びつつある。
 本講義の担当者は,過去15年以上に渡り、国内外の伝統的・住居・集落・都市の現地調査・研究を継続的に行い,居住文化の特性に関して実証的な研究を行ってきた。フィールドワークを行った地域は世界の主要な地域を網羅し,数10ヶ国以上,集落数では300箇所を優に越えている。本講義においては,世界の伝統的住居・集落・都市(環太平洋地域・中南米・アフリカ・西アジア・中国・日本)を対象としたフィールドワークの結果を紹介しながら,伝統的住居や集落にみられる自然・社会環境条件と空間構成の対応関係(建築材料や構造と風土の関連性,家族関係や宇宙観と住まい方の対応,民族や場所に固有なかたち)という視点から、居住文化の特性について解説する