テレビ・世界に開かれた窓 〜21世紀を読み解く〜

桜井均(映像学部客員教授
9月29日(土)〜2008年1月19日 毎週土曜日 4講時 15時40分〜17時10分
※10月27日(土)は立命館大学衣笠キャンパス
テレビは世界に開かれた窓である。時々刻々そこから世界の情報が茶の間に飛び込んでくる「取り込み口」である。しかし、地上デジタルが普及すれば、テレビの送り手と視聴者のあいだの双方向性が高まり、テレビは視聴者の反応を送り返す「吐き出し口」にもなる。21世紀になって世界は想像を絶する速さでメディア環境を変えている。情報は日々更新されるが、イメージの氾濫と貧困という事態も引き起こしている。にもかかわらず、原点は情報の質である。
 21世紀は、人びとが相互に見えざるネットワークを生みだし、たえず移動していく大きな潮流の中にある。この講義では、世界の潮流を記録したエポックメイキングな大型シリーズを、編年的にたどり、時代がどう動いたか、番組相互にどのような関係があるのか、それは社会にどう影響を与えたか、あるいは関係者や視聴者からどのような反応を得たかなどを、総合的に考察する。あわせて現代世界を解読するためのメディアリテラシーを習得する。
 たとえば、この講座では以下のシリーズを重点的に扱い、世界を読み解いていく。①国際社会の枠組みが大きく変わったと言われる1999年に制作した「イスラム潮流」は、勃興するイスラムの実態を世界規模で追った。②2001年の9・11同時多発テロのときには、なぜアメリカがねらわれたのかという視点を提出した。③そして、アメリカの「対テロ戦争」の対象となり、爆撃を受けた直後のアフガニスタンと開戦前夜のイラクを取材した番組。④ユーラシア大陸の諸民族が国境を越えていく姿を追ったドキュメンタリー。⑤冷戦の敗者となったロシアの最深部でなにが起こってるかを取材たシリーズ。⑥膨大な負債にあえぐアフリカは、石油をめぐる米中のせめぎ合いの前線になっている。⑦そして、イラク戦争のあいだに中南米で続々と左派政権が誕生している。
 こうしたシリーズを関連のニュース、同テーマをあつかった海外メディアの番組、映画などを適宜、比較対照しながら現代社会とテレビのパラレルな関係を内在的に理解していく。
講義スケジュール 第1シリーズ  13億人のイスラム復興 +コソボ空爆
    99年危機、21世紀の幕開け
第2シリーズ  アメリカの中のイスラム +グアンタナモ収容所
    アメリ大統領令と正義の戦争
第3シリーズ  アフガンのストリートチルドレン + 開戦前夜のイラク 空爆下の人びと
第4シリーズ  ユーラシアの諸民族  + シーア派ベルト
越境する人びと、見えざるネットワーク
第5シリーズ  コーカサス回廊の人びと + ロシア小さな人びと     崩壊したユートピアの残骸
第6シリーズ  ソマリア内戦 + スーダン内戦
アフリカのイメージなき戦場
第7シリーズ  ベネズエラ革命 + ブラジルの世界資源戦略
アメリカの裏庭に誕生した左派政権

教科書(要購入)
参考書 「イスラム潮流」、「アフリカ・21世紀」、「ユーラシア 文明の活断層を行く」(以上 日本放送出版協会)、「世界史の臨界」(岩波書店)、「力の論理を超えて」(NTT出版)、「『正しい戦争』という思想」